悪人 スタンダード・エディション [DVD]愛に飢えている
一言でこの主人公たちを表すならばそう言うのかもしれない。
あらすじだけ言えば、人とちゃんと向き合えない男の子が
出会い系サイトで知り合った女の子に馬鹿にされて、かっとなって
気づいたら殺しちゃってて、そわそわして誰かと話したくて
また出会い系サイトで知り合った女の人と会ってその人と逃避行して
最後はつかまっちゃうっていうそういう話なんだけど
この映画に出てくる人の特に若い人たちは
すごく愛に飢えていて
愛することとか
愛されることとか
愛ってなんなのかとか
とにかくそういうことが全然わからない人たちで
だからほんとに愛を手に入れたときに
苦しくて苦しくて
仕方がなくて
どうしようもなくなって
普通ではありえない道を走っていってしまう
そんな風に受け取りました。
私は。
田舎が舞台なんです。
博多は九州では都会なんだけど
主人公の出身地は海が見える長崎で
ヒロインの出身地は田んぼの広がる佐賀の中でも田舎の街で
狭い世界で狭い交友関係で
ときめく出会いもなく
毎日同じ風景を見て
同じ人と会って
生きてるのか死んでるのかわからない毎日を繰り返して
「人から愛されたい」という思いが
こんなに伝わってくる映画は初めて見たかもしれません。
寂しくて寂しくて、「誰かと出会いたくて」
主人公もヒロインもそう言うんです。
ただ、「誰かと出会いたくて」
人を愛せる人は、わからない気持ちかもしれません。
愛に満たされている人はわからないことかもしれません。
この人は自分がいないといけない
この人は自分を受け入れてくれる
誰かを愛すると
自分のしたことがどんなことだったか
愛する人をどうしたいのか
急にそういう思いに駆られて
苦しくて苦しくて
どうしたらいいのかわからなくなって。
人を殺してしまった自分がこの人を幸せにできるのか
この人はこれからどうなってしまうのか
日に日に弱っていくこの人を自分はどうしてしまうのか
人を愛することを知ってしまった男が最後に取る行動の意味を
どうか勘違いしないで欲しい。
私はそう思います。
作品全体で「悪人」とは一体誰のことだろう?と訴えています。
最後の主人公の顔が…本当のことを語っているのではないかと私は思います。
そして印象に残った台詞を一つ。
柄本明演じる被害者の父が、娘を蹴りだして峠に置き去りにした男を見ながら言うのです。
「あんた、大切な人はおるね?その人の幸せな様子を思うだけで、自分までうれしくなってくるような人たい。
おらん人間が多すぎるよ。
今の世の中大切な人もおらん人間が多すぎったい。大切な人がおらん人間は、なんでもできると思い込む。自分には失うもんがなかっち、それで自分が強うなった気になっとる。
失うものもなければ欲しいものもない。だけんやろ、自分を余裕のある人間っち思い込んで、失ったり、欲しがったり一喜一憂する人間を、馬鹿にした目で眺めとる。
そうじゃなかとよ。本当はそれじゃ駄目とよ。」
★キャスト★
- 清水祐一 - 妻夫木聡
- 馬込光代 - 深津絵里
- 増尾圭吾 - 岡田将生
- 石橋佳乃 - 満島ひかり
- 鶴田公紀 - 永山絢斗
- 清水房枝 - 樹木希林
- 石橋佳男 - 柄本明
- 佐野刑事 - 塩見三省
- 久保刑事 - 池内万作
- 矢島憲夫 - 光石研
- 清水依子 - 余貴美子
- 堤下 - 松尾スズキ
- 石橋里子 - 宮崎美子